元カレたちのストーリー

今までプレイした乙女ゲームのネタバレ感想を載せています。

帝國カレイド「天崎 奏嗣」

●天崎 奏嗣/アマザキ ソウシ(cv津田健次郎さん)
24歳、182センチ。
帝國の最高権力者。
信じるのは己のみ、まわりの意見は聞かず 独裁政治を進め、民衆の反感を買っている。
妹さえも政治の道具として扱う冷徹な男。






~ネタバレ~
(ハッピーエンド)
中央都市の王宮に呼び寄せた張本人、それが主人公の兄である天崎奏嗣だった。
田舎で母親と爺やと婆やと叔母と暮らしていたものの、母親が死んだ時も、王宮の父親が死んだ時もどちらの時も自分が王宮に呼ばれることなど無かったのに何故今になってここへ呼ばれたのか?その真意を探るべく奏嗣に尋ねたいと思うものの、久し振りに会う奏嗣はとても威圧感があり、真顔で、言葉少ない男だった。
しかもとても忙しい奏嗣と話すことはままならず、ただ言われた事といえば「王宮から出てはいけない事」と「必要なものは全て使用人に言うこと」と「自分の妹として淑女のマナーを身につける事」だった。それさえ守っていれば自由にしていいと言われるし、何か言おうと思っても会えるのは朝と夕の食事の時のみで、食事中に話そうものなら淑女としてなっていないと言われてしまい何もいえなくなる始末だった。
しかしせっかくの兄妹なのだからと、奏嗣と仲良くなりたい主人公は諦めずに何度も奏嗣に話しかけたりしていた。使用人達からも冷静な上に冷たいと言われている奏嗣だったが、主人公の押しの強さにペースを崩されているのか、なんだかんだと少しは話してくれるようになる。
しかも主人公に対して興味がないと思われていた奏嗣だったが、実は主人公のために田舎の料理を調べて調理人に作らせたり、ストレスを溜めないようにと部屋の花瓶の花をいつも違う匂いの花に変えるように指示をしたりしてくれる優しい一面があった。さらに、とても大切な花瓶を割ってしまった主人公に対し怒るどころか、自分が割ったと言って庇ってくれたりもした。
怖いと思っていたけれど、本当は優しい一面がある奏嗣。主人公が頑張って作ったお弁当を美味しいと言って少し笑ってくれたりもして、そんな自然な姿が本当の奏嗣なのかもしれないと思え始めた。
そんな頃、奏嗣の仕事の手伝いをしたいと言って本の整理を頼まれた主人公だったが、奏嗣の本棚に懐かしい絵本を見つける。それは昔王宮に住んでいた時母親が何回も読んでくれた本だった。喜ぶ主人公に奏嗣は「持っていっていい」と預けてくれ、主人公は早速部屋でそれを開くと、中から幼い子供が書いたような綺麗な字の紙がハラリと落ちてきたのだ。その紙を見た瞬間、主人公は昔の記憶を思い出す。
幼い頃、母の膝に乗ってこの絵本を読んでもらっていた。その時部屋へ訪れた父が自分より年上の男の子を連れてきて「今日からお前のお兄さんだよ」と紹介してくれた。それが奏嗣だった。お兄さんに憧れていた主人公は喜んで奏嗣の手を引き、ソファに座らせると彼の膝に我が物顔で座り、甘えた。今考えれば幼かったとはいえ強引だとは思うが、その時は本当に嬉しかったのだ。そして少し困っている様子だった奏嗣だけど、それでもそのまま自分を抱っこして絵本を一緒に読んでくれていた。その時母が読んだのがその絵本の中にある短編集の一つの嘘つき狐のお話だった。そのお話は嘘つきの狐が嘘をついてばかりいて森の動物達に徐々に無視されるお話。しかし森に猟師が現れることを知った狐は慌ててみんなにその事を教えに行くが、いつも嘘をついていたので誰も信じない。焦った狐はわざと猟師に、動物達がいる森と反対の森を教えて連れて行った。しかしそこには動物がいるはずもなく、怒った猟師は狐を殺したのだった。
嘘はいけないという例えの本だったのだろう。しかし幼かった主人公は狐が不憫で悲しくて奏嗣の膝の上で大泣きしてしまった。すると奏嗣は優しく頭を撫でてくれて、そして何かを書き、その紙を渡してくれた。そこには「本当は狐は助かって、今まで嘘をついていたことをみんなに謝り、みんないつまでも幸せに暮らしました」というオリジナルのストーリーが書いてあった。その奏嗣の優しさが嬉しくて、それからというもの主人公は奏嗣にベッタリになっていた。
そんな記憶を思い出し、紙を大切に抱きしめる主人公。やはり奏嗣はとても優しかった。なのに何故今はあんな風に人を寄せ付けない雰囲気になってしまったのだろうか?
高い税金を納めるように取り決め、民からの批判の声は高いこの帝國。独裁政治を行い、父の代からいる大臣達にまで心を開かず信頼を失っているように見え、そのせいで奏嗣を政治から退かせたいと湧き上がる反逆軍が形成される始末。
そんな冷たい顔をした奏嗣と、昔の面影を残す奏嗣。いったいどちらが本当のお兄様なのか、主人公は戸惑っていた。
しかし奏嗣の独裁的な統治は更にひどくなり、主人公も民衆も皆不審に思い始める。更に主人公は叔母から託されたことがあったのだ。叔母は、先代の死を怪しんでいた。健康であった主人公の父、その人が急に死んだことも、後継者であった主人公と母親を田舎に追いやったのも、全て自分の権力のために奏嗣の仕業ではないかと。主人公はそれを信じたくはなかったが、近くで見ている奏嗣を信じることができなくて、そして自分のことも信じてくれない奏嗣に対して辛くて、叔母の言う通りに夾竹桃という花の毒を採取し、奏嗣の茶に入れ毒殺を試みたのだ。
しかし毒が入っていることは奏嗣に容易く見破られてしまった。主人公は投獄を覚悟したが、奏嗣は悲しい顔をし、そしてまたいつもの顔に戻り、何事もなかったように主人公を部屋に返した。
それから奏嗣は益々主人公の前に姿を現さなくなったが、主人公のお披露目の会である舞踏会で主人公にとても綺麗なドレスを作ってくれた上に、みんなの前で二人でダンスをしてくれた。憧れていた奏嗣と体を寄せ合って煌びやかなホールで踊り、そして目の前の奏嗣はかつての優しい表情で微笑んでくれる。主人公は、命を取ろうと思った相手に本当は恋い焦がれていたのだ。信じてくれなさと、時代のせいで、こうなってしまったけれど。
しかし気づいた時にはもう遅く、なんと奏嗣はその場で主人公の婚姻が決まったと発表した。そんな話は一切聞いていなかった主人公は驚き声を上げるが、お前はただの使える駒の一つだと冷たく言われ、絶望した主人公は部屋で一人泣いた。
結局それから有無も言わさず婚礼の話はどんどん進んだ。相手の顔もわからない、ただ、この国のためになる人物と結婚するというだけ。
もはやこの王宮にいるのも数日しかないという日、主人公は最後にと、奏嗣と話をすることにした。本当は奏嗣が父を殺したのではないかということと、自分がそんなに邪魔なのは血族者であり奏嗣の地位を奪う確率があるからなのかということを問うために。奏嗣を問いただすと、奏嗣は何も言ってくれず、主人公が一人怒鳴り散らせば奏嗣は耐えられなくなったかのように主人公の腕を掴み壁に押し付け、お前を家族だと思ったことは一度もないと冷たく囁いた。
その一件以来、奏嗣の独裁者ぶりは恐ろしくひどくなった。奏嗣に刃向かうもの、意見するものは全てすぐに投獄される始末。奏嗣と仲の良かった者も、誰が見ても普通の人間ですら何人も投獄され、もはや民衆や反逆軍が謀反を起こすのも時間の問題のように見えた。
主人公が嫁ぎ先に出発する日、このまま奏嗣を放っておくことは出来ないと決心し、小刀を懐に携え、奏嗣をその手で殺すことを決めた。しかし向かった奏嗣の部屋にはなんと投獄されていたはずの顔見知りの仕立て屋さんがいたのだ。その光景に意味がわからず立ち尽くすと、奏嗣は昔のような優しい声で「部屋を出てはいけないと言ったのに」と諦めたように言った。そして、もはや隠し通せないと思った奏嗣は本当の事を話してくれた。
奏嗣はなんと反逆軍のリーダーだった。
昔父親が死んだ時、たしかに父親は病気ではなく毒殺だった。しかし幼かった奏嗣はそれに気づけなかった。よく考えればその頃から懇意にしていた大臣が毒を盛ったのは明らかだったのだが、その時はわからずにただ大臣に「お父様の跡を立派に次ぐのですよ」と言われ、優しくしてくれた大臣に感謝したほどだった。
しかしそれは結局、大臣達からしたら操りやすい駒を用意したかったからというもの。奏嗣は彼らに言われた通りになんでもやっていった。しかし大きくなると、おかしいことに気づき始め、本をたくさん読めば今までやってきたことの愚かさに気づいた。そのため、奏嗣は徐々に大臣達の言葉を鵜呑みにしなくなり、自分で統治を始める。
しかしそうなると大臣達は奏嗣が邪魔になり、更に今度は主人公に目をつけた。だから彼らは主人公をこの王宮へ呼び寄せようとしたのだが、悪意に気づいた奏嗣が先に主人公を囲ったのだという。
そして昔主人公と母親を田舎に送ったのも先代の父親の指示だったことも教えてくれた。大臣達の不穏な動きに気づいた父親が愛している二人に危険が及ばないようにと、わざと離してくれていたのだ。
そして今また主人公が狙われ、それが一番の悲しみである奏嗣はあえて反逆軍を動かし、革命を起こそうとしていた。
その話を聞いていると、大きな爆発音が聞こえた。そう、奏嗣の指示で王宮に火を放つ計画になっていた。そして奏嗣もまた、知らなかったとはいえ大臣達の指示でたくさんの不幸を生んできた罪滅ぼしに、自分も共に死のうとしていることが伺えた。
真実を知った今、共に逃げようと言う主人公に対し、奏嗣は言う。お前とは逃げられない、もう兄だと嘘はつけないからと。
お前を妹としてではなく、愛しているからだと。
一人ぼっちで孤独だった自分に、幼く愛らしく懐いてくれた主人公は本当に奏嗣の希望だった。生きることに彩りを与えてくれた主人公を愛し、そしてそんな主人公の幸せこそが自分の一番の幸せなんだと抱きしめる。
奏嗣の想いと愛を感じ、主人公は奏嗣を抱きしめ返した。そして、お兄様は私を不幸にするのですか、いなくなってしまった愛した人を想って生きろと言うのですかと、言った。
兄としてではなく、自分も愛していることをようやく伝えたのだ。
その言葉に奏嗣は主人公を抱きかかえ、窓を飛び出した。怪我するのも構わずに主人公を守り、燃え盛る王宮から脱出することができたのだった‥。
その後、奏嗣が予め主人公のために用意していた屋敷で二人は暮らし始めた。奏嗣は足に怪我を負ったものの、今度は反逆軍のリーダーとして街の中で演説をし、民と力を合わせて国を作って行く覚悟をした。
演説が終わって家に戻ると、主人公は「お兄様」といって奏嗣を迎える。すると奏嗣は椅子に座り、その上に主人公を座らせ、いつになったらその呼び方を治せるのかと主人公を抱きしめる。自分はもう、兄ではなく恋人なのだからと。
奏嗣さんと呼ぶと奏嗣は優しく微笑んで口づけをしてくれる。まだ慣れないその口付けに頬を赤らめながらも、幸せだと思えるのだった。